病院の経営を少し勉強した
病棟看護師さんなら伝わる内容ですが、
一般の方になるべくわかるように
『今、(実は、かなり前から)医療界で起こっている
看護師不足?いや看護師人手不足?』の意味を書いてみました。
長文お付き合いください。
この業界で、よく『看護師さんが足らない』って耳にします
しかし、一方で潜在看護師といわれる
〝免許はあるけど看護師の仕事をしていない〟
という方が約70万人もいるのも事実です
毎年、看護学校や看護大学から
たくさんの卒業生が看護師となって活躍していきます
医師から見る看護師さんはマルチタスクをこなし
本当に忙しそうです。まさに一人何役?といった感じ。
『看護師がたらない‥』という声は、私が働いたことがある
全ての病院で聞こえる叫びといいましょうか
『じゃあ、じゃんじゃん忙しい病棟とかに
いっぱい看護師さんを配置しよう!
入社試験でたくさん合格だして、既卒採用もどんどん』
なんて思いますよね
でも意外に『XX病院の看護師採用試験落ちました。
今、看護師不足なんでしょ?なんで落とされるの?』
と思う方もいて
病院は看護師さん増やさないの?って疑問がわきます
いったい全体なにが起こっているんでしょうか?
これは、病院(20床以上の入院施設)では
治療内容などで看護師さんの配属人数が決まっており
たとえば急性期病棟では患者さんと看護師さんの比率が
10:1か7:1と国が定めた保険上のルールがあるわけです。
例えばわかりやすく
40人患者さんが入院できる病棟があったとします。
10:1の基準申請している病棟では
『常時4人の看護師さんを配置させてください。
それによってきめられた診療報酬(公定価格)をだします』
基準は、経験とか関係なく、単に看護師さんの人数になります。
この仕組みが曲者なんです。
私が経験してた全ての病院において
共通していると言っても過言ではありませんが、
急性期病棟の日勤帯では、次々と入院、退院患者さんが出入り
アナムネ(問診)をとったり、次回の外来予約をとったり
その間に、オペ室から
『XXさんのオペが10時からです、それまでに着替え、血管確保
トイレ、バイタル(血圧など測定)済ませておいてください』
と‥
ナースコールは『点滴終わりました』
『腰がいたいので、湿布もらえませんか?』という感じは当然ですが、
ちょっと待って、それ看護師さんの仕事?
といった内容もちらほら、それでも
『は〜い、うかがいま〜す』とよく動いてらっしゃいます。
思いつくだけでも、清拭、経管栄養の接続、
他科受診、リハビリや透析、検査の送迎、食事配膳、ベットメイキング
調子が悪い患者さんはドクターコールして指示受けし
臨時のCT撮影や、お薬投与が増え、ご家族をお呼びして
医師の病状説明に一緒に入ったり、
腹水穿刺や中心静脈カテーテルをいれるときの医師介助、
面会の方の案内‥
それをやりながら看護記録の記載、出張書類申請‥
どんだけこなしとるんや、この人たち(看護師さん)は
ううううん、書ききれない
たぶん、この倍以上のことが、
1日のうちに次々に起こります
40人患者さんがいる病棟で、
4人の看護師さんでこれらを時間内にこなすのは、
相当むずかしいミッションになります。
『10:1とかだれが決めたん???』
っていう気持ちになりますね
病院にもよりますが
緊急検査やオペがなく、救急車もこない
落ち着いた夜勤帯なら辛うじて
まだ、回る可能性があるかも?といったところ
じゃあ、病状の落ち着いた療養型病棟は?
いえいえ、こちらも
いまや患者さんの高齢化がすすみ
自分でトイレに行けない
徘徊したり、ベットから落ちたり
違う意味で見守りが多くなり
少人数の看護師さんでは到底目が届かない
ちなみに四日市消化器病センターでは
日勤帯の看護師さんは国がいう定数どおりではなく、
定数を上回る人数(200%)を配属しています。
しかし残念ながら10:1病棟の診療報酬は
『ギリギリその人数を満たす看護師さん』
のお給料を元に考えられていますので
大きく定数を超える看護師さんの配属は
一人分の分け前が減るということになるか、
そのまま病院の大赤字になってしまうのです。
頑張っている看護師さんには
できるだけお給料をだしたいと思う病院はあれど
今、7割以上の病院が赤字という状態で
(たぶんもっとひどいと思います、
この件については、ちょっと前のブログでも書きました)
https://ameblo.jp/yokkaichishoukaki/entry-12911344936.html
どこも看護師さんが忙しいからといって採用人数を
大幅に増やすということもできないんですね。
こんな状態では医療者の気持ちを維持することも
難しいと思います
なので、一般に潜在看護師さんは
『もう病棟へは戻りたくない』
って気持ちがまさってしまうのではないでしょうか?
看護師さんの仕事見てると、真面目で
根は『看護』という仕事が好きな方が多いようです。
病院にいる看護師さんが
『看護師さんが足らない』というのは
正確には、『(国が決めた)
基準どおりの看護師さん配置人数では、
業務をこなす人手が全く足りていない』
ということになろうかと思います。
どうしたらいいのでしょう?
例えば、今の10:1看護基準であれば
日勤は5:1、夜勤は10:1、
7:1看護基準であれば
日勤は4:1、夜勤は7:1
として
超多忙な日勤中心に看護師さんの基準人数を
時間配分で増やすことを前提とし、かつ
診療報酬を現状比1.3~1.5倍程度にあげないと
いろいろ回らないんじゃないかな〜と?
次回の診療報酬改訂が
日本の病院の運命を決定する気がします。
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2025年06月29日更新